あこがれのすそあげ。
ジーンズショップなんかに行ったりすると、ちょいとお洒落な兄ちゃんがミシンを操って裾上げしてくれたりする。
短足な私はいつも10センチぐらいカットしてもらうのだが、例え何センチだろうと、顔色を変えず作業にかかってくれる。
待ち時間およそ20分。
「な~んと、男でもミシンでぎるなが。たいしたもんだなや。」
などと作業風景をチラ見しながら感心したりする。
“お洒落な兄ちゃん”と“ミシン”という一見ミスマッチな組み合わせが妙にカッコよくて、なんだか敗北感すら覚える。
あの兄ちゃん、モテるんだろーなー。
いーなー。
今思えば、憧れの男性像の一つだったのかもしれない。
私がミシンの世界に入り込んだのは4年ぐらい前のことである。
ジーンズの裾上げは、基本的な技を組み合わせればそう難しいものではない。
全身タイツやらムエタイパンツばかり作っているうちに、いつの間にか私にも“ジーンズ裾上げスキル”が備わっていたのだ。
いま手元には、たまたま裾上げの必要なジーンズがある。
本日2008年12月17日。
長年私を苦しめてきた、あの敗北感から、ついに開放される時が来たのである。
勝ち誇ったように仁王立ちしたあと、作業に取り掛かる。
作業時間およそ20分。
マイジーンズの完成である。
しかし、まだ敗北感が拭えない。
なぜだ。
まだ何かに負けているような気がする。
ふと、窓ガラスに目をやる。
だらしない格好をした私が、ジーンズを手にして、ニヤけている。
ダサイ・・・。
ダサすぎる。
大事なことを忘れていた。
そう、私は“お洒落な兄ちゃん”というスキルを磨いてこなかったのだ。
時、すでに遅し。
兄ちゃんを通り越して今はもう中年オヤジである・・・。
ガチョーン。


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